諫早に住んでいると、人口の増減は統計表ではなく、日々の暮らしの中で肌に触れる感覚として届いてくる。
新しい住宅街が少しずつ広がっていく地域もあれば、商店の入れ替わりが早くなる通りもある。
そんな中でふと気になったのが、佐世保市の人口のこと。観光地としての知名度は高いのに、人口減少という話題になると急に重たい雰囲気が漂いはじめる。この重たさは、いったいどこから来るのだろうか。
県内で見たとき、佐世保の人口減少は本当に速いのか。あるいはそう見えているだけなのか。
私なりの視点で少し掘り下げてみたい。
減少の速さを語るなら比べ方を間違えると混乱する
人口の減り方を論じるとき、多くの人が一つのスピードメーターで語ってしまいがち。でも、実際には二つの軸がある。
一つは減少率。全体に対する割合で、自治体の規模に関係なく比較しやすい。
もう一つは減少数。実際に何人減ったかという絶対数だ。
佐世保のように人口の多い都市では、減少数が目立ちやすい。でも減少率で見ると、県内平均に近い範囲にとどまっている。(佐世保市公式 人口及び世帯数)
この二つを混ぜてしまうと話がかみ合わなくなる。逆にきちんと分けて考えれば、佐世保の人口減少が「派手に見えるだけ」なのか、「実際に速い」のか、整理しやすくなる。
県内だけを見れば佐世保は急減の筆頭ではない
長崎県内には、地理的に人口維持が難しい場所が少なくない。
離島や半島部など、移動や生活の制約が多い地域では、減少率がどうしても大きくなりがちだ。
そうした地域と比べると、佐世保市は決して先頭を走って減っているわけではない。数字だけで見れば、比較的穏やかだ。
でも、それで安心というわけでもない。佐世保の中心部は街の変化が目に見えて分かりやすい。
佐世保駅や四ヶ町アーケード、佐世保五番街などはまさに街の顔であり、変化があるとすぐ気づく。
国道35号を通って中心部に入るときの明かりの具合、人通りの多さ、店の並び──それらが減少の体感速度を速めているように感じる。
私はこの「見え方」の要素が、佐世保の人口の話を重たくしている一因だと思っている。
周辺市町村との比較で際立つ佐世保の印象
佐世保の人口減少が速いと感じられるもう一つの理由は、近隣との比較だ。
たとえば佐々町。佐世保のすぐ隣にありながら、増加傾向にあると言われている。(佐々町のページ)
隣が増えていると、自分の減少がより際立って見える。これも心理の働きだと思う。
ほかにも、波佐見町や川棚町、東彼杵町といった町が周囲にはある。これらは佐世保と同じ生活圏にあり、ゆるやかな人口の動きが感じられる場所だ。だからこそ、佐世保だけが急に減っているという印象を持ちやすいのかもしれない。
さらに視野を広げて、平戸市や松浦市、西海市といった地域を加えると、佐世保は急減の代表というほどではないと分かる。それでも、佐々町の存在が与えるインパクトは大きい。
ここで私が立てたい仮説がある。
中心都市というのは、住民を惹きつける一方で、生活圏の拡大にともなって郊外に人が流れやすくなる傾向を持っているのではないか。
たとえば国道204号沿いに住宅地が伸び、買い物も通勤も隣町をまたぐようになると、中心部の人口は少しずつ減っていく。
その現象が佐世保では、より起こりやすいのではないかと感じている。
観光と人口は別の話という混乱
佐世保には観光客が集まる場所が多い。
九十九島パールシーリゾート、展海峰、ハウステンボス。どれも有名で、にぎわっている場所だ。
だけど観光のにぎわいは、「住む人」とは別の話になる。
にぎわっているから人口は減っていないはず。そう思って現実を見ると、減少の数字が余計に受け入れにくくなる。私もそうだった。
にぎわいと定住は別もの。そう考えるようになってから、少し整理がついた。
同じくらいの人口でも減らない街があるという事実
県外にも目を向けてみる。同じような人口規模の都市として、佐賀市と上尾市を見てみた。(全国市町村人口ランキング)
佐賀市は県庁所在地で、行政・医療・教育などの都市機能が集中している。(佐賀市の人口についての個人ブログ)
上尾市は首都圏通勤圏にあり、住宅地としての吸引力が強い。(上尾市の人口事情)
このように条件が大きく違うと、単純な比較は難しい。
けれど「同じくらいの人口でも減っていない街がある」という事実は重い。
その視点で見ると、佐世保の減少は県内では平均的だとしても、同規模都市と並べたときには速く感じられる。
私はこの感覚を大事にしたいと思っている。根拠を無理に探すより、「そう見える理由がある」という考え方のほうが現実に寄り添える気がする。
結論は一つに絞れないからこそ視点を重ねて見る
佐世保市の人口減少が速いのか遅いのか。その答えは一言では片づけられない。
県内での減少率は平均に近く、突出して速いわけではない。
しかし、佐々町のような隣接自治体の増加や、佐賀市・上尾市といった同規模都市との比較によって、「佐世保は減っている」という印象が強まってしまう。
私は今、三つの軸でこの問題を見ている。
県内の統計、周辺との関係、同規模都市との比較。そのどれもが、少しずつ異なる輪郭を描いている。
そして次に気になるのは、市内のどの地域で、どの世代が、どう動いているのか。佐世保港の周辺、中心市街地、国道35号沿いの商業ゾーン、204号沿いの住宅地、観光地。そのすべてを見ていかないと、減少の正体には迫れない気がしている。
「速い」「遅い」だけでは語れない。それが、今の私の結論だ。これは答えというより、問いを立て直すための一歩として書き残しておきたい。
